アンカーリング

(NLP 用語の) 「アンカーリング」は、他の人々 (または、場合によっては自分自身) の特定の行動が、該当の個人で特定の内的経験をほぼ首尾一貫して引き出すプロセスと定義されます。たとえば、コーヒーの匂いを嗅ぐことにより、常に 1 杯のコーヒーを飲みたいという欲望をもつ場合がこれに当てはまります。(アンカーリングのプロセスを引き起こす刺激は「アンカー」と呼ばれます。)

アンカーリングのさらなる例として、ある昔の歌を聞くたびにその歌が流行っていた頃に付き合っていた恋人のことを思い出すことが挙げられます。(この場合は歌という外的な聴覚的刺激が内的反応を引き出しています。) また、フランスの 20 世紀作家プルーストの大著、「失われた過去を求めて」の冒頭部分で主人公がお茶に浸されたマドレーヌというお菓子の味を味わったとたん、子供のときにそのお菓子を味わった瞬間に戻り、その時点から主人公の過去のすべての記憶が何千ページに渡ってよみがえり始めますが、これはまさしく最も典型的なアンカーリングの例と言えます。(この場合は、味覚という内的刺激が内的反応を引き出しています。)

アンカーリングは、パブロフの条件反射と密接な関係があることは明らかですが、2 つの間には明確な違いがあります。すなわち、パブロフの実験の犬の場合に示されるように、条件反射が確立されるためには「刺激/反応 (さらに場合によっては、強化) 」の循環を特定の回数繰り返すことが必要になります。一方、特定の内的経験を引き起こすアンカーリングのプロセスは、通常、ただ一回の刺激によって確立されます。(この差異は、条件反射は「外的行動/外的行動」 [パブロフの犬の場合では、「ベルを聞く/唾液を流す」] の条件付けに関連している一方で、アンカーリングは 「外的行動/内的行動」の条件付けに関連していることを理由にしています。さらには、このことは、人間 [犬の場合もそうでしょうが] の内的行動 [経験] に対する敏感性は、外的行動 [経験] に対する敏感性と比べてはるかに繊細である事実にも拠っているように思われます。たとえば、ウォツラウィック編集の「創出された現実」で、ハインツ・フォン・フォースターは、人間の神経系には 1 億個の知覚受容体 (レセプター) がある一方で、スナプスの数は約 10 兆個であるので、私たち人間は、外的環境の変化と比べて 10 万倍 [!] 内的環境の変化に対して敏感である、と指摘しています。)

ここで、私たちの行動パターンの「条件付けを解除」するということは、通常は意識されないアンカーリングのプロセスを意識化し、これらのプロセスをコントロールして、それらから自由になることであることが明確になります。

また、アンカーリングは、インドのサムスカーラの概念と密接に関連していることに留意してください。

(注: このページのテキストは、Swami Guhen の論文、「NLP と精神世界」からの引用を基に編集されたものです。)

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